先週末、釧路のコーチャンフォー(大型書店)を何気なくブラーっとしていたら「釧路で園芸」という冊子が平積みされているのを見つけた。思わず手に取り中身をパラパラっと読むと、この地域に特化した園芸ガイドブックになっていて、迷わず購入してきた。園芸書の多くが全国、特に暖地向きに書かれたものがほとんどで、シーズンごとの作業や品種紹介でも、それらをそのまま取り入れるのはなかなか難しい部分があった。
北海道を対象にした本もいくつか有名どころがあるものの、道東のさらに東の釧路や根室地域の気候は独特なものがあるので、微妙に合わない部分があったりした。実際に札幌や岩見沢などで冬を越せる植物でも、こちらでは雪が少なく寒さが厳しいので、越冬ができないものがいくつもある。そんなわけで、まさにこの地域での園芸を楽しむための解説書ということでは、とても期待していた本でした。
著者、というか出版は「緑いっぱい市民運動」世話人会という団体で、去年、令和4年10月29日に発売されていたようだ。販売は釧路市内のコーチャンフォーが主で、さっき確認したところではアマゾンでは売ってませんでした。去年の年末も今年の年始もコーチャンフォーには何度か行っていたものの、気がつかなかった。
釧路に「緑いっぱい市民運動世話人会」という会が昭和46年に発足してから50年が経つようで、昭和52年には「釧路の園芸」という、やはりこの周辺地域でのガーデニングを解説した手引書が発行されていたようだ。それから45年が経ち、時代も花の種類も変化が多くあることから、今回あらためて作成・発刊のはこびとなったらしい。前回が「釧路の園芸」、今回が「釧路で園芸」という「の」を「で」に変えた理由は本の中で特別に記載はないが、きっと色々と考えるところや思いがあるのだろうなあと感じた。
昭和50年前後から平成にかけては、まさに自分の祖父が園芸を楽しんでいた時代で、場所は違えども各地に花を楽しむ人が多くいたことの豊かさに一瞬思いを馳せたし、そして自分が今また同じ趣味を持っていることに不思議さを感じる。NHKの趣味の園芸で、時々、昔のアーカイブ映像を見せてくれることがあるけど、結構色々な発見があったり、当時の雰囲気から懐かしい気持ちもして楽しい。
本の中では釧路地方の独特の気候について紹介されていて、釧路、帯広、札幌、東京の日照時間の比較なんかを見ると、本当にこの辺りの地域は夏に日差しが少なくて冬が明るいというのが一目瞭然。初夏の日差しの少なさは東京の梅雨の時期に匹敵するほど。夏にこっちの地域から帯広、札幌へと出かけて行くと、太陽光がやたらと眩しく感じられるのは気のせいだけではなく、天気や日差しの量自体が少ないためなのかもしれない。
1年草花の育て方について書かれたところでは、パンジー・ビオラの種まき時期として、やはり1月中に温かい室内で種をまくというのがあった。我が家でも同じ時期に種をまいているけど、他でもそうしているのだということが分かりちょっと自信を持つことができた。他に面白かったのは、我が家の庭とお隣さんの境に半ば雑草のようにして毎年生えてきている「コマクサ(駒草)」という植物があって、なんとこれが「高山植物の女王」だったということ!本来は本州や北海道の標高の高いところで自生しているケシ科の植物らしい。身近な街の中でみられる地域はごくわずかに限られていて、釧路市や周辺の町でしか確認されていないのだとか。可愛い花だったけど、あちこちで雑草みたいになっていたので、今年はもう少し丁寧に見てみようと思う。
コーチャンフォーの近く、釧路の市立病院のすぐそばにある春採湖でみられる草花について整理されている章もある。春採湖は今流行りの??シマエナガも生息しているらしいし、天然記念物に指定されている「ヒブナ」もいる。ヒブナについては、去年の新聞で何か新たな発見があったらしいけど、よく思い出せない。春採湖は周辺が散策路になっているようなので、今年は機会があれば行ってみようと思う。さらにもう一つ驚いたのは、釧路には独自の桜の品種があるということ。「釧路八重」「幣舞義美八重」「鶴菊桜」という品種で、名前からして、なんかとてもいい。釧路ではソメイヨシノは生育しないらしいのだけど、それに匹敵するかそれ以上の素晴らしい桜を見ることができるのだとか。ほかにも興味深い内容が色々とあったけど、いずれまた別のところで。