「人類にとって重要な生きもの-ミミズの話」第1章ダーウィンのミミズ

ダーウィンを惹きつけた小さな生きもの

第1章は、著者が初めて手のひらに乗せたシマミミズの描写から始まる。軽くて無害で、ただ小さく体を丸めるだけ、その姿に「何ができるのだろうか」と一瞬疑うが、やがて動き出し、ぬるりと粘液を残して元の住処に戻っていく。著者はミミズのこの小さな行動の中にも目的を持って動いていることを感じた。

この小さな生き物に強く魅了されたのが、進化論で知られるチャールズ・ダーウィンだった。彼は20代の頃、世界周航の旅「ビーグル号航海」から戻った直後に、叔父から牧草地の地下に沈んだ炭殻やレンガのかけらを見せられる。何年も前に地面にまかれたこれらの上にミミズの糞土が積み重なったことで、地表の下に瓦礫が埋もれていった。ダーウィンはそこで、土壌が「動く」ことを直感したのだった。

ダーウィンはその後、ロンドン地質学協会で「土壌形成にミミズが関わる」ことを発表した。以降数十年、昆虫の受粉や人間の感情表現など多様な研究を重ねる傍ら、ミミズの観察を手放すことはなかった。晩年、彼は自宅の庭でひたすら実験を繰り返した。

  • 落ち葉や小枝を穴に差し込んで、どの向きに引き込まれるかを記録。
  • 紙片や三角形の切れ端を土の上にばらまき、葉の引き込み方を統計的に調査
  • これらの80%以上が先端から引き込まれていることを示し、ミミズの行動に「選択」があると結論づける

ダーウィンはまた、ミミズの排出する糞土の量を計算し、1エーカーに数万匹が生息し、年間数十トンもの土を動かすと推計した。当時の批判的な科学者は「そんな力がミミズにあるはずがない」と退けたが、現在の研究ではむしろ彼の数字は控えめだったことが明らかになっている。

さらにミミズの働きによって古代ローマ遺跡の石畳や建築物が土に埋もれ、結果的に保存されてきたことにも着目した。大地の表層を更新し続ける存在として、ミミズは景観と歴史に影響を与えていた。

ダーウィンにとって、ミミズの研究は単なる趣味ではなかった。微細な営みの積み重ねが地質学的な変化を生む。その考え方は「進化論」と同じ原理に通じ、見えない地下の世界に目を向け、小さな生き物の営みに普遍的な法則を見出し、彼の科学者としての想像力の大きさを示している。

我が家の庭でも

花の苗を植える時に土をスコップで掘り返した時やバラの株元に肥料を漉き込む時など、必ずと言っていい程、ミミズに出会う。庭づくりを始めたばかりの頃には砂利ばかりの土地でミミズの姿は見えなかったのに、最近ではどこを掘ってもミミズ。出てきた時には少し離れたところに放してやるのだけど、うっかりとスコップで切断してしまうこともあり…。

このミミズたちについての本をたまたま出張先の古本屋で見つけたので読んで行こうと思う。

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