「人類にとって重要な生きもの-ミミズの話」第2章 謳われざるヒーロー

恐るべき繁殖力と多様なミミズたち

著者は最初、釣具店から細いミミズを買ってきてコンポストに入れたことから、思いがけない発見を重ねて行く。最初は1000匹ほどだった群れが、わずか数年で1~2万匹と数を増やしていったという。細い体で釣り餌用にしか見えなかったミミズが堆肥容器の中で肥太り、次の世代はさらに元気な個体に。驚異的な繁殖力を目の当たりにした著者は、ミミズの種類から研究と観察を深めて行く。

ミミズは大きく3つの型に分類できる。

  1. 堆肥生息型ミミズ(コンポストワーム):生ゴミや落ち葉の山で繁殖するタイプ。寿命は短いが爆発的に増え、消化管を通す際にはカルシウムなどを植物に吸収されやすい形に変える働きがある。カルシウム不足で生じることの多い「トマトの尻腐れ病」に生きたカルシウム補給剤としての役割を果たすかも。
  2. 表層土生息型(ナイトクローラー):ダーウィンが著書で取り上げたルンブリカス・テレストリスが代表例。寿命は6年ほどと長く、地中に深いトンネルを掘り、通気性や排水性を高めて土壌改良に大きく貢献する。動きはゆっくりだが、乾燥や環境変化に強く、まさに「土を耕す力持ち」といえる存在。
  3. 下層土生息型(深層ミミズ):地表にはほとんど現れず、地下数メートルで暮らしている。オーストラリアの巨大ミミズは体長数十センチから1メートルにも達し、移動するだけで地中から音が響くと言われるほど。アメリカ・オレゴン州にいる種はユリの花のような香りを放つと記録されている。環境破壊や都市開発で姿を消しつつあり、絶滅が危惧されている。

ダーウィンが生きた時代には、ミミズはただの「ぬるぬるした嫌な生き物」と見なされていた。しかし研究が進むにつれ、彼らが土を耕し、養分を循環させる「生態系のエンジニア」であることが明らかになってきた。肥沃な土を作るのは肥料や農業技術だけでなく、日々土の中で働くミミズの営みそのものである。

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