「人類にとって重要な生きもの-ミミズの話」第5章 目もなく耳もなく

ミミズは眠るのか?感じるのか?再生するのか?

第5章はミミズの感覚や行動、体の再生力についての解説。地中に住むミミズの生活にどう迫るか、という方法論の話も濃い。いまだに地中を観察するのは至難で、海や宇宙より、足元の地下の方が観察困難。

本章は大きく4つの観点でまとめられていた。

ミミズは眠るのか?

ミミズのいわゆる睡眠(周期的な神経生理学的ステージ)を確認した決定的証拠はまだない。行動的には活動低下(不動化)の時間帯はあり、昼夜・湿度・温度でリズムは出るが、哺乳類の睡眠とは異なる。大方のミミズ研究者たちの見解は「ミミズは眠らないようだ」とのこと。光や乾燥、振動への反応性で日常行動は説明できるようだ。昼は湿ったトンネルに、夜間に地表活動が増える。曇天、雨後は地表時間が伸びる。

「目も耳もない」は本当か

ミミズに目や外耳はないが、光受容細胞(体表の光感受性)で光を嫌う。光を感じると素早く退避する。振動や圧には敏感。ダーウィンは植木鉢をピアノの上に置いて鍵盤を叩き、振動でミミズが退避することを観察した。(我が家の庭でも土にスコップを入れると、その入れた場所ではなくて、少し横の別の場所からミミズが飛び出して来ることってよくある。)しかし、地面の上を歩いた位では出てこないのは、振動を区別しているから。

嗅覚については、匂いそのものを嗅ぐ器官はないが、体表、口周辺の化学受容で腐熟やph、塩類を弁別する。ダーウィンの台所実験では、腐敗の進んだキャベツ、玉ねぎ、香草などでははっきりした選好を示すことが分かった。肺はなく皮膚呼吸。体表は常に薄い粘液で覆われ、これがガス交換と乾燥防御の要。そのため、乾燥、高塩分、高温は致命的。

生殖の仕組み

ミミズは雌雄同体。一匹の個体にメスとオスの両方がある。だけど生殖には相手が必要。二匹の個体が腹面を合わせて逆向きに並び、環帯が分泌する粘液で体を固定し、精子を相互に交換。その後、環帯が分泌した粘液がリング状に固まり、レモン形の卵胞となって抜け落ちる仕組み(ちょっとよくわからない)。

体の再生の仕組み

土にスコップを刺した時にミミズを切ってしまうのはガーデナーあるある。俗説的な「ミミズの体を真っ二つにすると二匹になる」は誤り。しかしミミズは体を斬られても再生させることができ、ミミズの種類と切断位置で運命が分かれる。尾に近い方が再生力が高く、頭側は再生力が弱い。頭部そのものや口を欠損するのは致命的になりやすい。

残酷なことに、ミミズの古典実験では、ミミズの体を切って別の個体に縫合することや移植するなどは多数行われてきた。頭部と頭部を接合、尾部と尾部の接合も行われてきた。ミミズの再生に関する幹細胞集団の起源や遺伝スイッチの核心については未解明部分が多く、再生生物学へのヒントが期待されているものの、ヒト医療への貢献はまだまだ先の話。

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