昨年の夏に種をまいて苗作りをし、秋に庭に定植し越冬した美女なでしこ(美女撫子)の成長記録。
そもそも「美女なでしこ」という名前が他の草花と一線を画しているように思うのは自分だけだろうか。どこか明治時代を彷彿とさせるようなノスタルジックで素朴な響きがある名前だ。
目次
美女なでしことは?
美女なでしこは「ビジョナデシコ」とカタカナ表記にされたり、「美女撫子」と漢字表記になったり、「美女なでしこ」と漢字と平仮名が混ざった表記になったりと色々ある。学名は”Dianthus barbatus(ダイアンサス・バルバタス)”で英名は”Sweet william(スイート・ウィリアム)”というらしい。このスイート・ウィリアムと関連するかどうかよくわからないけれど、2011年4月のイギリスのウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンさんの結婚式では彼女のブーケの中に美女なでしこが入っていたんだとか。
原産地はピレネー山脈(フランスとスペインを隔てる山脈)やカルパティア山脈(スロバキア、ポーランド、ウクライナ、ルーマニアなど)に至る南ヨーロッパや東ヨーロッパ、バルカン半島の山岳地帯で、中国や韓国、ロシア南東部にもみられるようだ。
美女なでしこの学名は「ダイアンサス」だが、ダイアンサス=ナデシコ科ナデシコ属を指しており「美女なでしこ」ではないナデシコには他にも日本固有種のカワラナデシコやカーネーション(オランダナデシコ)もある。
暑いところでは秋まき1年草だが、原産地や冷涼な地域では宿根草となっている。美女なでしこの標準和名はアメリカナデシコと言うらしいが、大正時代にヨーロッパからアメリカ経由で日本に入ってきたという理由以外、アメリカとはなんの関係もないらしい。ヒゲナデシコという別称もあり、花と花との間に細長い苞がありそれがヒゲのように見えるところから名付けられたらしいけれども、こちらはあまりネーミングセンスがよくないと思う。
ガーデニングに用いられる草花の中では比較的タネまきも育苗もしやすい性質があるようだけど、開花を促すには寒さに当てる必要がある。暑さには弱いけど寒さにはかなり強いので、寒冷地で育てる場合には今回のように夏以降にタネをまいてから秋植えすると翌年には花をみることができる。タイミングが悪いと丸一年花がみられないこともある。
越冬と株の成長
夏の終わりのセルトレイに種をばらまきした。種も大きいので扱いやすく数日で発芽をした。その後の成長スピードも順調でポットへの移植もスムーズに行うことができた。秋に地面に定植した時も特別に神経を使うような繊細な作業は必要なくザクザクと植えることができた。そしてそのまま冬が来て雪の下へ。
春の雪どけで発見されたなでしこたち。雪の重みでぺちゃんこにつぶれてしまっている。葉の色もうすくなり、このう様子だけを見るとアウトという感じもするけれど、茎は意外にもしっかりとしていて強さを感じた。
約1ヶ月後、上の方にまとまって植えられているのが美女なでしこ。下はパンジーたち。黄緑色の新たな葉を展開している。
さらに1ヶ月後、どんどん大きくなり一株からニョキニョキと別の株を作るように成長している。
それから半月後、ニョキニョキと花茎を伸ばし、その先端にはまるで栗のイガのようなものがついている。これが美女なでしこのつぼみ。不思議だ。トゲトゲしているけど、触った感じは全然痛くなくトゲトゲしていない。
よくみるとピンクの花びらが見えつつあって開花直前であることがわかる。ちなみにこのイガイガは花色によって赤みがかかっているものと黄緑色のものとがある。
美女なでしこ、いよいよ開花
イガイガの部分がそのまま房になるような形で開花した。
すごくチャーミングでかわいい花だ。房咲きでみると一つの球体のような形だけど、花を一つ一つみるとカーネーションのような花だ。親戚筋であることを納得した。
6月末から7月に美女なでしこが満開となった。とてもにぎやかで庭が夏らしくパッと明るくなった。花色が色々でそれぞれがとても鮮やかに咲いている。
ボーダー花壇の背景になるように直線で植えたところ。実はこのなでしこの左側はチューリップを植えたところ。図らずもちょうどチューリップと入れ替わるようになでしこが開花した。なでしこ花壇はとてもにぎやかで可愛い印象を庭に与えてくれた。茎が長いので切り花にもしやすく花もちも良いのでとてもおすすめ。花がら摘みもほとんどせずとも大丈夫。花後には花茎を根元から切ってあげればそれでよし。
タネまきから育苗、定植、開花後まで管理全般どこをみてもとても育てやすい花だと思う。寒さに強いので特に寒冷地向きの花だとも思う。名前は「美女なでしこ」でも日本的なかわいさを感じるけど、「スイート・ウィリアム」で売り出すとちょっとまた印象が変わるような気がする。