小清水町「ゆりの郷こしみず LILY PARK(リリー・パーク)」

北海道東部のオホーツク海に面した小清水町には、リリーパークと呼ばれるユリに特化した広大な面積の観光花畑がある。広さは13万平方メートルで、東京ドームの3倍近い面積があるとパンフレットには書かれていた。この「東京ドーム何個分」換算というのが、生まれも育ちも北海道である自分にとっては馴染みがない表現なのだけど、すごく広いところなんだよというのは小さいころから分かるような気がしていた。そして、このリリーパークは実際にすごく広い花畑で、一面にさまざまな種類のユリがびっしりと植えられていた。

車でリリーパークに到着し、駐車場に入ってからもパークの全容はすぐには見えない構造になっている。ちょうど駐車場とパークの間には盛り土の上に作られた道路があり、これが丁度よく仕切りというか目隠しのような役割となっている。駐車場に面した受付で入場料を払うと、その少し横に盛り土に開けられたパークへ通じるトンネルがあり、この中を進んで行く。そしてトンネルを抜けると一面に広がるユリの丘が目に入り、トンネルのうす暗さと華やかな色の世界のギャップがたまらない感じになっている。

リリーパークの存在を知ったのは1、2年前くらいで、小清水町出身の知り合いから「花好きなら一度は行ってみては」と言われたものの、行ってみるけどそのうちね、という感じで行かなかった。というか意識からほとんど消えていた。今年の春に網走市に用事があり、途中で立ち寄った小清水原生花園の道の駅でリリーパークのポスターを発見し、なぜか強く「行きたい」と思った。

パーク内は品種ごとに様々な色や形のユリが植えられており、その数は100種類以上、700万輪もあるのだとか!ちょっと疑わしいくらいの数だけど、それくらいにたくさんのユリが植えられている。スカシユリ系やオリエンタル系など季節によって早咲きと遅咲き品種があるので、7月中旬から9月上旬までその移ろいを楽しむことができるように設計されている。

遠景で見ると品種別に色が区分けされているのが絨毯のように見え、これがサルビアとかマリーゴールドではなくユリで作られているというのがすごく贅沢。どのユリも活き活きと咲いていて色もよく、病気などもほとんど発生していない。スタッフのおじさんやおばさんに殺菌剤散布の有無について聞いてみたところ、発芽から成長期にかけて殺菌剤を散布しているらしいのだけれど、回数的には2、3回程度だとか。わが家のユリたちは毎年病気との戦いになってしまっているので、環境や植え方などをちょっと考えなくてはと思った。

もう一つちょっと意外性を感じたのはユリが植えられている土壌環境。土を見てみると正直あまり肥沃な土の雰囲気ではなく、どちらかと言えば痩せた土の印象だった。色も赤、黄色っぽい粘土質で、観光農園などではあまり見ないタイプの土質。そんな土の中から立派な株がボコっと育っているので、元々の球根の強さなのか、それともユリはあまり土質を気にしない植物なのか、これにもまた考えさせられてしまった。場合によっては球根は1年で更新(処分)しているかもしれず、それならばあまり土質は関係ないのかもしれない。

もちろん1年草花壇もあって、とても綺麗に手入れがされていた。

有料で園内をスタッフのおじさんに案内してもらいながら移動できるカートもあった。このカートが結構ビュンビュンと走っていて、後部座席にはおじいちゃんやおばあちゃんが乗っていた。結構何度もすれ違うことが多く、カートに乗っていないこちらの方も気にかけてくれて、カートを止めては後部座席のおばあちゃんたちと一緒に色々な品種について案内をしてくれた。こちらは無料なので申し訳ないと思いつつも、面白おかしい漫談調の語りはパークの良き思い出の一つとなった。

C?つ?

パーク内には軽食やドリンクを提供しているところもあり、散歩で乾いた喉を潤すことができる。なにせユリの開花期は真夏なので、暑さ対策は十分にした方がいい。パークを訪れたこの日は曇りだったけど、歩くと結構汗をかいた。ここの屋外ベンチでおじさん2人が昼間からビールを飲んでいた。

パーク受付でもらったパンフレットの表紙にこんな文章が書いてある。渋い。

「ゆり」この高貴で幽玄な花の世界を、心の印画紙に焼き付けてお帰りください。

ゆりの郷 こしみず リリーパーク パンフレットより

駐車場に隣接する直売所では、ユリの開花直前株や宿根草の販売がされていた。ホームセンターなどではあまり手に入らない品種のユリも多く売られており、種苗会社から球根だけを買うよりも安めなのでお得。株が開花直前まで育っているので、すぐに楽しみたい場合は良いかもしれない。定植して花後も適切に管理できれば翌年にも楽しむことができる。宿根草も大株のものを比較的安く手に入れることができる。パーク内で育てたものを株分けして販売しているとのことで、大ポットに入った直径20センチほどの中株宿根サルビアが7-800円だった。

とても見応えのあるパークなので、お花好きや園芸家はすごく楽しめる場所。今までなんで行かなかったのだろうと思っている。来年以降も機会があればまた行ってみたい。

追記

2022年シーズンも行ってきましたこの記事内(「庭仕事の真髄」第5章 街中に自然を運びこむ)に撮った写真を載せました。昨年以上に売店のお姉さんたちとユリの魅力について語ってきました。

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